新東京タワー(東京スカイツリー)を考える会

新東京タワー(東京スカイツリー)を考える会

記事

2012/09/13 日弁連が「電磁波問題に関する意見書」を政府へ提出

日本弁護士連合会は、2012年9月13日付けで「電磁波問題に関する意見書」を取りまとめ、同年9月19日に環境大臣、経済産業大臣、厚生労働大臣宛に、また、同年9月20日に総務大臣宛に、提出しました。

日本弁護士連合会のウェブサイト

 

書籍『携帯電話でガンになる!? ~国際がん研究機関評価の分析』

携帯電話でガンになる!? ~国際がん研究機関評価の分析 2011年5月31日、国際がん研究機関は、携帯電話電磁波を含む高周波電磁波を「2B」、すなわちヒトへの発がんリスクの可能性あり、と評価すると発表しました。この評価により、電磁波はもう安全だとは言えなくなりました。
本書は「2B」評価の内容と意味を詳しく分析し、電磁波問題にどう対処すれば良いのかを提起します。

電磁波問題市民研究会編著/緑風出版/四六判240頁/2100円

【内容 筆者・敬称略

第一章「高周波の健康影響を考えるために」上田昌文=NPO法人市民科学研究室代表
第二章「電磁波リスク論の枠組みを検討し、構築する」上田昌文
第三章「「発がん可能性あり」(2B)の評価について」植田武智=科学ジャーナリスト
第四章「海外ではどう反応し、どう対処したか」矢部武=ジャーナリスト
第五章「携帯電話基地局からの高周波電磁波」大久保貞利=電磁波問題市民研究会事務局長
第六章「新しい技術で増える電波」(東京スカイツリーなど)網代太郎=新東京タワー(東京スカイツリー)を考える会共同代表
第七章「電磁波障害に医学は何ができるか」宮田幹夫=北里大学名誉教授
コラム1「電磁波過敏症と思われる症状に対する歯科治療例」藤井佳朗=新神戸歯科院長
コラム2「内科医から見た電磁波過敏症対策」石川雅彦=医師
第八章「携帯電話・電磁波に対して市民・行政は何ができるか」網代太郎

書籍『新東京タワー ~地デジとボクらと、ドキドキ電磁波』

新東京タワー ~地デジとボクらと、ドキドキ電磁波新東京タワーの概要・経緯・問題点のほか、新東京タワー問題と関連が深い、電磁波と健康影響の関連についての問題、および、視聴者無視で押し進められているテレビ地上デジタル化の問題ついても詳しく解説しています。
「地域活性化」という明るい面だけがアピールされている新東京タワーですが、建設されるとさまざまな心配があり、また、そもそも新東京タワーは必要不可 欠なものではありません。新東京タワーに賛成の人も反対の人も、よく分からないという人も、新タワーを推進している行政、事業者、マスメディアからの情報 だけでは分からない、新タワーの事実を知るために、ぜひご一読ください。
網代太郎著、緑風出版刊、四六判269頁、税別2,000円。書店または出版社へご注文ください。

もくじ】

はじめに

第1部 新東京タワーとは
第1章 新東京タワーの概要
地上デジタル放送の電波塔/事業主体は東武鉄道の子会社/東京都墨田区「業平橋・押上地区」に建設/新タワーのデザインと設備/新タワー周辺の開発
第2章 新東京タワーの経緯
地デジ開始と新タワー構想/東京タワーを使用することに/テレビ各社が「秋葉原タワー」を希望/新タワーで電子機器 に電波障害の恐れ/テレビ各社が都へ要望書/地デジ開始と誘致合戦再開/第一候補に墨田区、第二候補さいたま市/墨田区に付けられた条件/現タワーも含め て検討/航空法による規制の見直し/一年かかって「最終候補地」に/なぜ墨田区が選ばれた?/新タワーへ動き出した墨田区と東武/テレビ各社とさらに交渉 /拙速な建設地の決定/「タワー賛成」でなければ区民にあらず?

第2部 新東京タワーの電波は大丈夫か?
第1章 電磁波による健康影響の研究報告

電磁波とは/電場と磁場/電磁波の種類/刺激作用、熱作用、非熱作用/基準値は熱作用のみを考慮/「危険」「安全」どちらが本当?/WHOの「国際電磁界 プロジェクト」/極低周波による影響-小児白血病/極低周波による影響-成人脳腫瘍、ALS、流産/高周波による影響の報告例/細胞への影響
第2章 電磁波過敏症
電磁波に苦しむ人々/電磁波過敏症の症例/WHO元事務局長は電磁波過敏症/WHOも電磁波過敏症を認識/東京タワーの地デジ電波で過敏症に
第3章 電磁波問題への対応
各国の電磁波対策/送電線や携帯電話への対策/日本は無策
第4章 放送タワーからの電磁波
オーストラリアでの研究/英国での研究/イタリアで「放送タワー有罪」/北京では放送タワーを移動へ/米国の新タワー反対運動/名古屋の新タワー反対運動/瀬戸市の新タワー反対運動/北向きのヒマワリ/東京タワーからの電波
第5章 電磁波安全論
経済産業省/電力会社/総務省/総務省「委員会」メンバーの研究者/因果関係の証明は疫学が決め手/葬られかけた疫学調査/WHOの“威光”を利用/携帯 基地局についてWHOの見解/WHOへの批判/WHOと電磁波過敏症/化学物質過敏症も「気のせい」だったが/スポンサーによって研究結果に大きな差/総 務省「委員会」の報告書要旨/総務省「委員会」の公平性に疑問/国民の不安を解消?
第6章 新タワーの電磁波をどう考えるか
新東京タワーからの電磁波の強さは/人口密集地に建てるタワー/新タワーからの電波は地デジだけではない?/アナログテレビ放送の「跡地利用」/「ユビキ タスネット社会」/ユビキタスネット社会の中の地デジ/デジタル変調のほうが影響大?/電波の変調/UHFは人体が吸収しやすい/予防原則の考え方を/幅 広い関係者の関与/電磁波とうまくつきあう/他人の健康にも配慮を

第3部 新東京タワーで地域はどうなる?
第1章 経済的リスク
新タワーで「地域活性化」/大勢の観光客が来る?/地元商店などに打撃/区は建設費を出さないというが/周辺整備には出費/新タワーの経営が苦しくなったら/テレビ各社は責任なし
第2章 新タワーによる環境悪化
景観への影響/住民に景観利益/眺望権/耐風性・風害/電波障害/新タワーの環境アセスメント/環境アセスメントの限界
第3章 新タワーと災害
大地震に対応可能というが/新タワーが防災拠点?

第4部 新東京タワーは不要
東京タワーから地デジ送信中/受信障害を新タワーで解決?/新タワーとエリアカバーは無関係/テレビ各社による説明/新タワーはワンセグのため/関東以外では/国も「不可欠ではない」。放送各社にも不要論/タワー&電波でなくても

第5部 地上デジタル化の問題点
第1章 視聴者不在の地上デジタル化

テレビデジタル化の経緯/視聴者だけが蚊帳の外
第2章 地上デジタル化のメリットは本当か?
「ゴースト解消 」/「高画質・高音質」/「マルチ編成」/「データ放送」/「番組表と録画予約」/「双方向性」/「高齢者、障害者へのサービスの充実」/「ワンセグ」
第3章 地上デジタル化の問題点
テレビなどの購入を強いられる/地上へのしわ寄せ/集合住宅の共聴施設/地方テレビ局の質の低下/「アナアナ変換」に巨費/コピーワンス
第4章 海外の地上デジタル化
日本とは違う海外の地デジ/海外の地上デジタル化も順調ではない/各国では視聴者への公的支援を実施
第5章 なぜ地上デジタル化?
総務省などによる説明/新たな通信放送産業のため/電波が足りない?/政官財の利権のため?/NHKの受信料確保のため?/マスメディア集中排除原則の緩 和/規制緩和と業界再編の果ては/放送の寡占化が招くもの/2011年のアナログテレビ放送終了は困難

最終部 新東京タワーをどうするか
なくても良いものによるデメリット/新タワー、電磁波、地デジの共通点/市民不在の仕組みを「あるべき姿」へ/スケジュールの見直し/幅広い関係者の参加/環境アセスメントと電磁波や健康状況の監視

参照文献
関連年表

2 電磁波

携帯電話機から発信される電波(高周波電磁波)と脳腫瘍の相関性が多くの研究で示されています。また、携帯電話基地局近隣住民が健康被害を訴えている事例が全国であります。スカイツリーから送信される電波が、住民に影響を与えることはないのでしょうか。

テレビ塔についての研究

携帯電話中継基地局よりも格段に大きな出力の電波を送信する、テレビやラジオの放送タワー。それらの周辺で、がんの発症リスクが増加するとの研究報告もあります。

たとえば、オーストラリアの電信電話会社「テルストラ」の専属医だったホッキングらは、シドニー郊外にある三つのテレビ・ラジオ放送タワーと14歳 以下の小児がんとの関係を調べ、1996年に報告しました(1)。三つのタワーから近い3自治体と、その周囲の6自治体を比較したところ、脳腫瘍の発症率 と死亡率の増加は見られませんでしたが、白血病の発症率は1.58倍(95%信頼区間1.07~2.34)、死亡率は2.32倍(同1.35~4.01) と、有意に増加しました。リンパ性白血病に限ると、発症率は1.55倍(同1.00~2.41)、死亡率は2.74倍(同1.42~5.27)でした。

東京タワーはどうか

「科学と社会を考える土曜講座」(現・NPO法人市民科学研究室)などは2000年7~10月に、現在の東京タワーから半径2km以内の255地点 で電磁波を測定しました。全測定地点で日本の基準を下回っていたものの、諸外国の指針値(イタリアやロシア10μW/c㎡、スイス約2.4μW/c㎡)と 比べて高い地点もありました。

東京タワーからの電波による健康影響については「疾病の発症データが不備であるために、残念ながら東京タワー周辺地域を直接の対象にした疫学研究は 困難であると言わざるを得ない」(2)とのことで、ハッキリしたことはわかりませんでした。ただし同団体は、小児白血病発症率の全国平均をもとに、東京タ ワーが立地する港区における1958年(東京タワー完工)から2000年までの死亡数を計算すると5人となるところ、統計に示された実際の死亡数は17人 なので、「かなり多い感じがする」ともコメントしています(3)。

地上波デジタルテレビ放送

テレビの地上波デジタル放送(地デジ)は2003年12月に一部地域で始まり、放送エリアが順次拡大され、アナログ放送と並行して行われた後、 2011年7月にアナログ放送が終了して「完全地デジ化」しました(東日本大震災による被害が大きかった岩手、宮城、福島の各県のみ、2012月3月まで アナログ放送を継続)。

アナログ放送と比べるとデジタル放送のほうが、より弱い電波でテレビがきれいに映ります。そのため、デジタル放送電波のほうが出力は小さくなり、アナログ放送電波より人体への影響も小さい、と説明されることがありいます。

しかし、そう単純な話ではなさそうなのです。携帯電話も開発当初はアナログ電波でしたが、第2世代以降のデジタル携帯電話が急速に普及したことか ら、アナログ電波とデジタル電波を比べる研究が行われました。その結果、アナログ電波よりもデジタル電波(デジタル変調された電波)のほうが人体などへの 影響が大きい可能性を示す研究結果が多数報告されました(4)。

複雑な変調をされた電波は、自然界の電波とかけ離れたものです。元山梨大学講師の有泉均さんは「電磁波照射による細胞からのカルシウムイオン流出の ような、弱い電磁波による生体への影響は、そのエネルギーではなく変調を受けた信号の作用によるものです。地上デジタル放送電波のように短時間で振幅や位 相が激しく変化するような変調では、信号の作用が強まり、生体への影響が大きくなる恐れがあります」と指摘していました。

地デジ電波で体調悪化

実際に、地デジ電波で体調が悪化したと訴える方々がいる。

東京都内に住む男性会社員(36歳)は、2004年8月に東京タワーからの地デジ電波の出力が上がったことにより、自分が電磁波過敏症を発症したと おっしゃっていました(5)。また、福岡市の小山ゆみさん(42歳)は、自宅から約7kmの場所にある福岡タワーが地デジの試験放送を始めた2006年3 月から体調が悪化し、北里研究所病院(東京都)の主治医から「電磁波過敏症かもしれない」と言われました(6)。

イタリア、中国にスカイツリーは建てられない

新タワー建設事業は東京都環境影響評価条例に基づき、環境影響評価調査(環境アセスメント)の対象となり、事業者である東武鉄道とその子会社が環境 アセスメントを行いました。新タワーからの電波に対する住民の不安は根強く、住民からの要望を無視できずに、条例に規定されていない「電波(電磁波)」も 評価の対象となりました。

2007年8月に東武がまとめた環境影響評価書案は、新タワーからの電波送信によってもたらされる周辺地域における電磁波上昇レベルの予測値を示 し、それらは国の「電波防護指針」を下回っているため「地域住民の日常生活に影響を及ぼすことはないものと考える」と予測しました。

人体に急性影響を及ぼさない程度の弱い電波の長期曝露による健康影響の疑いが否定できないとして、海外では予防原則の考え方などから、日本の電波防 護指針に比べて格段に厳しい指針値などを設けている国や自治体があります。たとえば、イタリア、中国では、日本の0.028倍程度(539MHzの場合) という低い数値に設定しています(7)。
新タワーの環境アセスメントで示された予測値をもとに計算すると、新タワーから1000m以内のほとんどの距離でこの0.028を上回り、1000mを超 えても、なおしばらく上回りそうです(図)。東京スカイツリーからの電波は、環境アセスメントで示された数値に基づけば、イタリアや中国などでは安全だと は認めてもらえないのです。

環境影響評価書案に示された東京スカイツリーからの電波強度のグラフ

(「環境影響評価書案 業平橋押上地区開発事業 -資料編-」347~355頁の数値に基づき網代作成)

天津タワー周辺に「高層の建物は建てない」

中国と言えば、このような話があります。

墨田区と北京市石景山区との友好交流協定締結10周年を記念して、2007年10月に、山﨑昇・墨田区長を団長とし、区議会議長、区議有志からなる 友好親善訪問団が訪中しました。墨田区が新タワーを誘致した関係から、訪中団は天津市の天津テレビ塔(天津タワー。高さ415メートル)を視察しました。

その時、山﨑区長は中国の案内役の方に「タワーの電磁波で健康影響はありますか」と質問をした。山﨑区長は「影響はありません」という答えを期待し たでしょう。ところが中国の方は「影響はあります。しかし、基準値内ですし、周辺に高層の建物は建てないようにしています」と説明しました。山﨑区長は 黙ってしまったそうです。これは、訪中団の方から聞いた話です。

テレビ塔は広いエリアへ電波を送るため、送信アンテナに近い高さでは電波が強くなっており、高層住宅の住民は強い電波の直撃を受ける恐れがありま す。このため、中国では周辺に高層建築物を建てないよう配慮されているのでしょう。一方、スカイツリーから約1km南の錦糸町駅周辺や、約900m北東の 曳舟駅周辺では再開発が進み、超高層住宅が建てられています。住民の健康は大丈夫なのでしょうか。

人口密集地に建設

イタリアや中国などでは建てられない東京スカイツリーが、日本では人口密集地に建設されました。東京スカイツリーからおよそ1km以内に位置する墨 田区、江東区の各町の人口を合計してみたら、約9万3500人でした。1km以内だけで10万人弱が居住しているのです。もちろん、1km以遠にも大勢が 住んでいます。ちなみに、東京タワーからおよそ1km以内に位置する各町の人口の合計は、約3万8800人でした(8)。

スカイツリーが立地する墨田区押上の周囲は、住宅や商店、町工場が混在した下町で、木造の住宅も多く、コンクリート造の建物よりも電波をよく通すの で、住民の被曝量がより大きくなる恐れがあります。特に成長途上で電磁波の影響を受けやすい可能性が指摘されている子どもたちの多くは、自宅や、自宅から 近い保育園、学校などへ通い、毎日24時間、スカイツリーからの電波を浴び続けることになります。

日本共産党墨田区議団が行った「2010年5月区民アンケート」によると、「新タワー建設で心配されている問題は、ありますか」との質問に対し、 もっとも多かった「交通渋滞」(282名・50.1%)に次いで多かったのが「電磁波など健康被害」(167名・29.7%)でした。心配は「特になし」 は55名(9.8%)でした(回答者562人による複数回答)。

地デジ以外の電波も

東京スカイツリーが建てられれば、地デジ以外にもいろいろなアンテナが設置されて、電波の種類や量はどんどん増えていくだろうと当会は予想していたが、残念なことにその予想は当たってしまいました。

地デジ以外に、タクシー無線、マルチメディア放送、FMラジオの電波送信が行われています。このほか、環境影響評価書によると、携帯電話基地局の設置も想定されています。

アナログ放送のテレビタワーであっても、安全であるという保証はありません。まして、人口密集地に建設され、地デジという新しい電波を出す東京スカ イツリーは、国や墨田区、東武鉄道が言うように安全であるという保証はありません。当会は健康影響が発生しないことを願っていますが、心配です。

(1)Bruce Hockingら ”Cancer incidence and mortality and proximity to TV towers” 1996年

(2)科学と社会を考える土曜講座『東京タワーの電磁波リスク・調査報告 資料集』2002年、「東京タワーの電磁波リスク調査報告 概要」2頁目

(3)科学と社会を考える土曜講座、前掲資料、22頁

(4)植田武智『しのびよる電磁波汚染』コモンズ、2007年、36頁

(5)網代太郎『新東京タワー~地デジとボクらと、ドキドキ電磁波』緑風出版、2007年、84頁

(6)加藤やすこ『ユビキタス社会と電磁波』緑風出版、2008年、74頁

(7)在京6社の地デジ電波は521~557Hz。その中央値であるテレビ朝日539Hzという数値を使って計算すると、日本の基準値は「周波数 (Hz)÷1.5」なので、539÷1.5≒359.3μW/c㎡。イタリア、中国などは10μW/c㎡。10÷359.3≒0.028となる

(8)港区、墨田区、江東区のウェブサイトで公表されている、住民基本台帳に基づく町丁目別人口データ(2011年12月1日現在)をもとに計算(日本国籍でない住民は含まれていない)。

2012/10/29 「東京タワー」→「スカイツリー」への移転による電波障害は深刻

10月28日付『毎日新聞』報道によると、在京テレビキー局の電波送信所を東京タワーから東京スカイツリーへ移転させることが、当初予定の来年1月から大きくずれ込む見通しとなった。スカイツリーから電波を出した場合の電波障害対策に時間がかかるためとのこと。
報道によると、今年7月からNHKと民放各局が共同で、スカイツリーから試験電波を出して受信状態のサンプル調査を始めたところ、電波が強すぎることやア ンテナの向きが原因で、全く映らない世帯が方角や地域に関係なく見つかった。NHKのある幹部は「1月の移転は無理。アナログ放送と並行した地デジ化とは 異なり、今回は一夜で行うため、それまでに難視聴世帯対策を完了する必要がある。5月までに解決したいが、莫大な追加費用がかかる」と述べているという。
スカイツリーは受信環境改善のため「必要」と主張されているが、当会は計画当初から、スカイツリーは「不要」であり、東京タワーからの移転により、むしろ受信障害を引き起こすと主張してきた。当会の主張の正しさが裏付けられた。

2012/07/08 スカイツリーで地元に悪影響

スカイツリーで地元に悪影響 区内商店売上減、ごみ、騒音…

7月8日に都内で開かれた「第9回東京自治研集会」(東京自治労連などによる実行委員会主催)の「開発・まちづくり分科会」で、「すみだスカイツ リー開 発の光と影」と題して東京都墨田区議会議員(共産党)の西恭三郎さんが報告しました。「開発」がこの分科会のテーマですが、当会共同代表・網代も主催者側 からの依頼で、 スカイツリーの電磁波による健康影響の恐れや、地デジタワーとしてはそもそもスカイツリーは必要不可欠なものではないことを報告しました。電磁波について 西さんも懸念を持っていて「健康調査を行うよう保健所に働きかけている」と発言しました。
ここでは、西さんの報告の中から、現状報告についての部分を中心に紹介させていただきます。

 スカイツリーが立地する墨田区はもの作りの街で、町工場が多い街だ。工場の人たちが商店街で日用必需品を買い求めている。観光にはほとんど縁がなかった。観光地には宿泊施設があるものだが、墨田区に主なホテルは三つぐらいしかない。
しかし、スカイツリーができて様変わりした。昨年あたりからマスメディアが連日報道し、工事中は写真撮影の人が殺到した。5月22日の開業以来は、毎日何万人以上が押し寄せてくる。
昭和33年に東京タワーが出来た時には、下に店はそれほどなかった。しかし、スカイツリーは売り場面積5万2000㎡の大型商業施設「東京ソラマチ」を作った。この面積は、墨田区内の小規模小売店の総売り場面積の半分にも相当する。

がめつい東武
 この中に312店舗が入ったが、そのうち300店舗が都心などからのブランド店だ。ソラマチの店じたいは赤字になっても、広告塔になれば良いということだろうと思う。
私たちは墨田区内の商店の入居を優先すべきと主張した。最初に区内商店対象のテナント募集説明会が開かれ400店舗が集まった。しかし、坪3~5万円の 家賃に加え、売上げに応じて7~17%を支払うという条件だったため、とても採算が合わないということで、入居の希望は一社もなかった。
一方、都心で説明会を開いたら1400店舗が集まった。その中から300店舗に絞った。
区内から一社も出ないのはたいへん問題ではないかということで、墨田区も交渉して、ようやく15店舗が入った。これらも、墨田区内では相当有力な企業だ。
東武は家賃で絶対に妥協しない。仕方がなく、区で年間2900万円を負担し、区内物産の直販所を設けた。
私は東武鉄道の取締役会の議事録を入手して驚いた。このツリーは千載一遇のチャンスだ、どう東武がもうけるかだ、いかにして公の金をつぎ込ませるのかに あるのだ、という趣旨のことを取締役会で議論していた。それぐらいの、がめつさだ。東武鉄道は、区民のためということは頭の隅っこにさえなく、自分のグ ループ企業がどれだけ利益を上げるかだけだ。
さすがに東京新聞が開業日に社説で「残念なのはスカイツリー内に併設される商業施設『東京ソラマチ』が、ブランド店ばかりなことである。テナント料が高く、出店できなかった地元商店街では客足が遠のく恐れもある。地域と共存する配慮を望みたい」と書いた。

売上げ10分の1の店も
 工事中は、中に入れないので、近隣の商店街はけっこう繁盛した。テレビでも放送されたが、そば屋は天丼のエビをタテにしてツリーの真似をしたら売れたとか、何でもかんでもツリーの格好をすれば売れた。
ところが、開業日とともに様変わりした。一番響いたのはお土産店で、人が全然こなくなった。店の人がお客に尋ねたら「スカイツリーやソラマチの中で買わないと、お土産にならない」と言われた。
数百m離れたある居酒屋は、開業前は毎日10~15万円はコンスタントに売り上げていたのに、開業後は1万円しかないこともあるという。「これからどうなるのだろうか」という悲鳴が聞こえている。
区はスカイツリーの経済効果を880億円と試算したが、今後を見なければならない。
一度はスカイツリーへ行ってみようという区民も多い。展望台は予約でいっぱいなので、スカイツリータウンの中を散歩する。中で安売りをしている弁当を 買ったりする。主婦もお茶をする時にソラマチへ行く。生鮮品も売っているので、普段の買い物もできる。それで他の地区の売上げが減る。

周遊しない観光客
 区はスカイツリーの観光客になんとか区内を回遊してもらうと、ミニバスを3路線開設した。乗車料100円で、1回 乗り換えても100円のまま。これを観光客でなく、区民が買い物や通勤に使っている。タワーを中心にしたルートなので、区民がバキュームのようにタワーに 吸い寄せられている。競合する都営バス路線の削減の話があり、削減反対の署名運動が起きている。
区内を周遊したくても、観光バスの駐車場が足りず、2時間しか駐車できないので、展望台やソラマチの中を見るだけでも時間が足りない。
観光バス以外の客も、東武がスカイツリーから運行している浅草、上野や東京ディズニーリゾートなどへの直行バスに乗って行ってしまう。
中で買った弁当を表のベンチで食べて、ごみを捨てていくなど、ごみが大変な状態だ。ガムを捨てられることも多く、近隣町会が一生懸命ごみ拾いをしていたが、ガムをとるのは大変。また、スカイツリーの前の川の中にもごみが捨てられる。
ツリーの下だけは道路がきれいになったので、夜は暴走族にもってこいの遊び場になり、朝まで話し声や爆音で近隣住民が眠れないという事態も起きた。

区の関連支出で区民生活にしわ寄せ
 区は3900万円の補正予算を6月議会で組んで、専門業者にガムや川のごみなどをとってもらったり、夜間に警備員2名を配置することにした。この費用は東武が負担すべきと区議会各党が主張し、区と東武が交渉中だ。
タワー関連事業への墨田区の支出は、われわれが議論して約30億円減らしたが、それでも108億円にのぼる。また、スカイツリーの隣に踏切があり、観光 バスはここを通るので大渋滞が起きている。これを高架化するために275億円かかり、約60億円が墨田区の負担になる。合わせて200億円近くで、墨田区 の区民税の一年分に相当する金額だ。税金の使い方がこれで良いのかと思わざるを得ない。
東武から墨田区へ税金は一銭も入ってこない。特別区なので、法人税、固定資産税は都が徴収する。雇用は5000人のうち非正規1200人が区内からだが、これで区民税の徴収は増えるのか。
墨田区は全国に先駆けて、住宅の不燃化助成制度をやっている。33年間で83億円を支出した。ツリーのためにこの5年間で使ったのも、ちょうど83億 円。しかも、今の山﨑昇区長に変わってから、お金がないという理由で、不燃化助成の金額はどんどん減っている。前の2人の区長のペースで助成を進めていた ら、現在の倍以上の不燃化ができて木造住宅密集地域の解消も大きく進んでいたはずだ。
一方で、東武グループは一年間で純利益200億円を見込んでいるという。スカイツリーは1000億円かかったと言われており、5年でもとをとることを目指しているのかもしれない。